「俺らもだけど、谷川さんとか、工藤とか、おっさんら、もろ心臓にくるから、これきりにして」
ちょっと柔らかい言葉で良太は直子を窘める。
「はい!」
元気よく直子は返事をする。
「なんか、千雪さんのお友達って、すごいタフそうな人ばっかだね」
「だよね~。今回俺なんか出てってもへなちょこで、足手まといだからさ、みんな腕に自信ありの猛者ばっか。辻さんて千雪さんの高校の同級生らしいけど、その辻さんの友達の啓さん、将太さん、淳史さんて、ハマの元ヤンらしいよ」
「やっぱ、なんか喧嘩慣れしてる感じだったよね。雰囲気も強面だしさ」
「あーあ、俺もなんか武道とかやっとけばよかった」
今更ながらに良太は思う。
「いいのよ、良太ちゃんは野球一直線なんだから。あ、でも、谷川さんも凄かったよ」
少しいつもの調子を取り戻してきた直子は、谷川が出水をあっという間に倒した時の様子を説明した。
「ああ、やっぱガチで刑事だったんだ、谷川さん。訓練とか練習じゃなくて、実地でやってましたって感じだよな」
「何だっけ、身内の方がやっちゃんと結婚したから刑事を辞めたって聞いたけど、もったいないね」
「まあ、お陰でうちに来てくれたんだから、うちとしては有難いけどね。今回なんか特に」
谷川のことを割と自分が信用しきれていなかったのだと思ったのは、今回工藤のことがあったからだ。
最初青山プロダクションに入った時も、給料がいいからという理由で入ったものの、身内が下っ端ヤクザと結婚したばかりに、誇りを持っていた刑事という仕事を辞めざるを得なかったことで、工藤をヤクザだと嘲ってさえいた。
そんな谷川だから、工藤が逮捕されたことを知ったら、それみたことかと会社を辞めてしまうかもしれないとさえ思ったのだ。
だが、実際は工藤のために自ら動いてくれて、挙句に真犯人を捕まえてくれた。
良太としてはありがたくも申し訳ないという気持ちだった。
今回のことで本当に、いろんな人に助けられているのだと再認識もした。
「そういえばさ、何で直ちゃん、工藤のことわかったの?」
引っかかっていたことを良太は思い出した。
「だって、佐々木ちゃんのお遣いで青山プロ行った時、ちょうど刑事ですって顔した不細工なおっさん二人が階段降りてきて、ちょうど駐車場にいた時、勝手にしゃべったのよ、二人で。中山組長の甥だからとか、確実にムショ送りにしてやるとか」
直子はまたその時の怒りを思い出したのか、拳を握りしめる。
「勝手なこと言ってんじゃないわよ! って思って、最近の事件をググったらあのクラブのママが殺されたって事件が目に入って」
「藤堂さんに話したんだ」
「だって、やっぱ思いついたのが藤堂ちゃんで」
「藤堂さん、直ちゃん拉致されたってものすごおく責任感じてる」
「うん。謝ります」
途端直子はまたしゅんとなる。
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