恋ってウソだろ?!78

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 あたかも二人の蜜月の終わりを暗示しているかのように。
 それだけ時間が経ったのだと佐々木はあらためて思う。
 見上げると今にも降り出しそうな重い空がまた陰鬱な気分にさせる。
 まあ、別れ話ならちょうど似合いか。
「どうぞ」
 いつぞやのように、沢村はインスタントのコーヒーを入れたカップをぼんやり庭を見つめていた佐々木に渡した。
「ああ、どうも……」
 言葉が続かない。
 エアコンがようやく効いて空気が流れたいせいか、佐々木はくしゃみをした。
 すると、ふわりと佐々木の後ろからコートが掛けられる。
「…すまない」
 そんな優しさが今の佐々木にはたまらない。
 一口のコーヒーの温かさが身体に染み渡る。
 同時に縛られていた緊張から解きほぐされる。
 沢村はコーヒーを持ったまま、窓際に立った。
「……それで、話って?」
 沈黙に耐えかねて、佐々木が口を切った。
 後ろ姿は何も答えない。
「わざわざここまで来えへんでも………」
「勝手に終わりとか言って」
 ボソリと沢村が言った。
「こんなとこに連れて来て、勝手なんはお前やろ!?」
 佐々木は思わず、声を荒げる。
「あんたが全然俺の話を聞こうとしないからだ!」
 振り向いた沢村は声高に応戦する。
「今更俺に何の話があるんや!」
「今更?」
「彼女、ええやん。才色兼備のよさそうな人やし」
「彼女? マリオンのこと言ってるわけ? 彼女は……大体、何でそんなことあんたにわかる?」
 沢村のきつい視線を、佐々木はまともに受けることができず、目を逸らす。
「それは……みんな、言ってるし……ああ、もう、しまいや。こんなとこで俺なんかと話なんかしててええんか? 彼女ほっぽってきて、とっとと戻れよ!」
「マリオンを妬いたくせに」
 断言的な台詞に、佐々木は狼狽える。
「な………自意識過剰もええとこや! これやからちょっと人気があるやつは……」
「じゃあ、何でいきなり逃げ出したんだよ? あんたの大事な仕事をほっぽって!」
「それは……急用を思い出して……」
「どんな? 携帯まで忘れるほど?」
 さらに突っ込まれて、しどろもどろに佐々木は言い訳を考えるが、頭の中は真っ白でどんなうまい言い訳も出てこない。
「せやから、急用は急用や! ほんま、わからんやっちゃな!」
「ったく、あんた、どうしてそう強情なんだ!」
 自棄っぱちな言い草の佐々木を、沢村は怒鳴りつける。
「何でお前にそない言われなあかんね!」
「強情だから強情って言ったんだ! 俺が………俺があんな女とどうかなるわけないだろ? んなもの、マスコミのでっちあげだ!」
 沢村はテーブルの上にカップを置くと、じっと佐々木を見据えてその両肩を掴み揺さぶるように言い募る。
「俺はあんたしか見ちゃいない!」
 その眼差しはあまりに真剣すぎて、佐々木は身動きがとれない。
「……お前……」
 佐々木は目を閉じ、やっとの思いで言葉を紡ぐ。

 


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