Tea Time2

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 立ち居振る舞いにせよ服装にせよ大人びていた幸也だが、いくら高校生離れしていたとはいえ、秀さんが果たして彼らを大人と思っていたか否かは怪しいと幸也は思っている。
 幸也らが高校生とわかれば、下手をすると店の営業も危なくなるはずだが、半分中国人の秀さんは、ただ黙々とカウンターの中でバーテンダーをしているだけだ。
 ただ、ガタイの大きさや雰囲気のワイルドさで高校生とは思われないのをいいことに、平気で酒も飲んでいた武人とは違って、車だからとか何とか理由をつけて連れていた女の子にはいくらでも飲ませながら、幸也と志央は高校を卒業するまでこの店で酒を口にしたことはない。
 そこは抜け目のないワルと武人をして言わせる所以だ。
 その後『HIRONDELLE』はお洒落な大人の店としてこの界隈では定着したが、値段も若干高めの設定だから、お子様連中が大挙して押しかけるような場所ではない。
 裕福な育ちで余るほどの金を自由にできる境遇の幸也や武人、志央らだからこその話だ。
 相手の女の子たちも同様で、でなければ社会的に自立した大人だった。
 そういうわけで彼らを知っている仲間以外で、彼らを高校生だと見破った女の子はおそらくいないだろう。
「でぇ? 今度は何だ? 志央がどうしたとか電話で言ってたが?」
 スパッと切り出されて、幸也は一瞬答えに躊躇し、煙草に火をつける。
「だいたいここにきて何でまた志央が登場するよ? 可愛い勝っちゃんを今度泣かせたら、いくら心の広い俺でも承知しないよん」
 志央という存在が幸也の心の中に子どもの頃からずっと昔から棲み続けていたのは、志央という人間が、彼らが連れている女の子などより遥かに綺麗で魅力的だったからというだけでなく、姉の美央が他界して以来、心が壊れかけた志央を守ることが自分の使命のように思っていたからだ。
 あの頃は、志央には自分しかいないのだと、そう信じていた。
 志央はだが、自分で大切な人を見つけ、彼がその手をあずけたのは幸也ではなかった。
 秀さんは、今の幸也にとってもっと深く入り込んでしまった面影が別にいることも知っているはずだ。
 珍しく酔って饒舌になった幸也が秀さん相手に独り言のように心の中をぶちまけたのはボストンに発つ前の晩だった。
「こないだ、あのタコ坊主と一緒に勝浩に会ったって、志央のやつが」
 ようやく幸也は懸念材料となっている話を口にした。
「タコ坊主って、お前まだ七ちゃんのこと根に持ってるのかよ」
「俺は事実を言ってるに過ぎない。タコ坊主はタコ坊主だ」
 幸也にタコ坊主と言われた男の、一見ぬぼっとした大男の憎めない笑顔を思い出すと武人も苦笑を禁じえない。
「お前こそ、七ちゃんなんて、やけに親しげじゃねぇの?」
「そりゃ、勝っちゃんと一緒に七海ともよく会うし」
「へえ、よく会う、ね」
 グラスを少し持ち上げると、幸也は秀さんにおかわりをオーダーする。

 


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