残月34

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 志村や小杉、奈々や谷川も沢村が来ていると知って集まってきた。
「沢村さん、お久しぶりです。今年は大活躍ですね」
「お陰様で。今日は良太のヤツが四苦八苦してるって聞いて、陣中見舞いです」
 志村に声をかけられて、沢村は笑ってそう答える。
 中央でのそんなやり取りをよそに、二村は良太と一緒にいたのが沢村と知って、さらに不機嫌になっていた。
「沢村選手、広瀬さんと仲がいいみたいですよ。すごいですね。沢村ってマスコミ嫌いで有名なのに」
 マネージャーの下山は昼休みを利用して、二村に言われてサプリメントなどを買うためにドラッグストアまで行ってちょうど帰ってきたところだった。
「フン、何が沢村よ!」
 声高に二村をあの女呼ばわりした男が沢村と知って、実際悔しいやら面白くないやらで、この発言となったわけだが、それを見ていたのは檜山だ。
 檜山はもっと前から二村が弁当をぶちまけたことに気づいてちょっと離れたところからずっと見ていた。
「二村ってバカなのか?」
 ボソリと呟くと、檜山も良太や沢村のところに向かった。
「ほんとに沢村選手とライバルだったんだ?」
 急に檜山にそんなことを言われて、良太は苦笑する。
「対戦成績打率六割だけどな」
「うっさいな! 三振だって取った!」
 鼻で笑う沢村に、良太は食って掛かる。
「やっぱでかいな。アスリートは鍛え方が違いますね。あ、檜山と言います」
「能楽師の檜山匠さん。今回、映画に出演頂いているだけでなく、いろいろとご協力くださってるんだ」
 沢村に自己紹介した檜山を、良太が補足説明をした。
「沢村です。能楽師って、良太、お前、能なんてわかるのかよ」
「ただいま勉強中だ!」
 良太はムキになって言い返す。
「沢村さん、アディノのCMすっごい素敵ですね!」
 奈々が大きな沢村を見上げて笑顔で言った。
「ありがとう。佐々木さんや青山プロのお陰ですよ」
 沢村は良太と親しいことから、CMなどの仕事に関しては青山プロダクションを窓口として委託している形なので、社員や俳優陣も親近感があるらしい。
 やがて沢村が暇を告げると、撮影が再開された。
「良太、ちょっと」
 撮影が始まる直前、沢村が良太を呼んで二人は現場を離れた。
「何だよ、佐々木さん、すっげく忙しいから、こっち来るのなんて無理だぞ?」
 良太はどうせそんなことだろうとふんで、先回りして言った。
「わぁかってるって、んなこと。佐々木さんに確かめたし」
「じゃ、何だよ?」
 良太が聞くと、沢村は徐に話し始めた。
「佐々木さんの土地、買っただろ? 俺、うちを建てたいんだ」
 良太は沢村を見上げた。
 前から、ホテル住まいから抜け出したいと言っていたのを良太も知っている。
 土地を買ったことで、それをどうするのかとはまだ聞いてはいなかったが、良太にも予測はついていた。
「土地を買ったことだけで、佐々木さんあんなに怒ったし、うち建てるとか言ったら、どうなんだろうな」
「お前、会社、ニューヨークじゃないのか? ウイルソンとの」
「それはそれ、だろ。要は拠点をどこにするか、だけだ。前は沢村の家が嫌で、ポスティングの話もMLBにどうしても行きたいとかより、日本を抜け出すことばっか考えてた」

 


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