「俺にできないわけがないだろ?」
ルカは自信ありげに言った。
だが、本当はデレクの気持ちが嬉しかった。
「デレク、とにかくお前にもやってもらいたいことはある。これがDr.C及びプログラムαについての資料だ」
ラコストはブーたれているデレクにはおかまいなく、二人に資料を渡した。
「何だよ、これ。さっぱわかんねえよ」
デレクはますます眉間に皺をよせる。
「要はこいつが敵さんの手に渡ったということだ」
ルカが言った。
「そうだ。とりあえずざっと目を通しておけ。ただ、こいつがもし、悪用されることでもあれば、さらにそいつを造ったDr.Cがもし敵に回ったら、地球の一つや二つ、木っ端みじんになるってことだけは頭にたたき込むんだ」
ラコストがそう言った時、ドアが開いた。
静かに入ってきたのは、長身で引き締まった体躯の黒髪の男だった。
ルカはハッとした。
彼にとっては懐かしくも複雑な思いを蘇らせる顔だった。
「ケイン!」
「久しぶりだね。ルカ、君はちっとも変わっていないな」
ケインと呼ばれた男は微笑みながら歩み寄り、ふわりとルカを抱きしめた。
端正な顔だちに黒い瞳は冷ややかな光を浮かべている。
「大学の同期だったな、君たちは。紹介しよう、デレク・ローズマリーだ。こちらはケイン・リッグス。君らと同じアメリカ人だ。ずっと北欧からドイツあたりで活動している。実は他でもない、彼が『カフカ』をしばらく追っていたという事をつい先日耳にした。そこで、今回の任務に参加してもらう事になった」
デレクは差し出された手を握ったが、何となく面白くない。
「ケインには、Dr.Cの助手と言う役割で、『カフカ』からの連絡を待って、ルカとアジトに一緒に乗り込んでもらう。それをやつらに納得させるのが先決だが。そしてデレク、君は、彼らの行く末を確実にキャッチして後を追うんだ」
「ちょっと待てよ! 部長、何で俺がこいつらのケツを追うんだよ! ルカのパートナーはこの俺だぜ!?」
デレクは部長にくってかからんばかりに喚いた。
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