キスを重ね互いの体を絡ませることには慣れたといえるくらいルカはデレクとそうやって夜を過ごしている。
最初の時も少しは酒が入っていたとはいえ、デレクの行為に対しては抵抗はなかったものの、散々女を泣かせてきたらしいデレクが自分に対してそういう目を向けてきたことがルカは意外だった。
偏見という文字が何よりルカは嫌いだったし、そういう意味で自分をカテゴライズするのも好きではない。
女の子ともつきあったことはあるし、心が傾いた相手が男だった時にも、違和感を持たなかった。
その時はプラトニックで終わってしまったが。
「好きだ…ルカ…ルカ……」
けれど、デレクとこうして体を重ねている時、デレクがキスをしてくる時、自分の心の中はよくわかってはいても、デレクの心を信じきれないでいる。
切なげなデレクの言葉に、ルカを見つめる目の深い色に心は揺れるのだが、ルカはその言葉を口にしたことはまだない。
気になるといえば、仕事仲間でありパートナーであることもだろう。
今回の事件に対しては、デレクには俺ができないわけがない、などとえらそうなことを言ったルカだが、正体もわからないDr.Cの身代わりといい、はっきり言って先が見えないのだ。
得体の知れない重い何かに支配されて、どこかで怯えている自分に焦燥感を募らせている。
ただ、こうしてデレクの腕の中にいる時の言葉にできない安寧な空気感がルカの心に安らぎを与えていることだけは確かだった。
どこかで、そんなルカをきっちりわかっているのだと、見下ろす瞳の奥にデレクの思いだけは感じられて、その背中に回した指にルカはぐっと力を入れた。
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