Born to be my baby-デレクとルカ25

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 ルカがトイレのドアを開けるなり、デレクもすぐに追いついた。
「なんだ、お前も緊張してるのか?」
 からかい口調で見上げたルカを、デレクは壁に押し付けたかと思うや、その顎をつかんで上向かせた唇をふさいだ。
 ねぶるように執拗なキスに、苦しくなったルカがデレクの胸を叩く。
「………!! お前、俺を窒息させる気か!」
 ようやく息をついて、ルカが抗議した。
 デレクはそれに答えもせず、今度は思い切りルカを抱きしめる。
 少し癖のあるブロンドやマスクが甘いせいで、一見幼くひ弱なイメージを持たせるデレクだが、実際は身長180センチを超えたルカがすっぽり腕の中に納まるほどの肩幅やがっしりと頑丈な体躯だと、常にその腕に抱かれていればこそわかっている。
 一瞬、ルカの肩に顔をうずめるようにしたデレクは、やがてまた何も言わず、ドアを開けて出て行った。
「……デレク……なんだよ! バァカ!」
 あれだけ口の減らないやつが何も言わないとか、デレクのきつい思いがルカにいやというほど伝わった。
 

 ド・コリニー邸のホールには着飾った富裕層の老若男女、紳士淑女が三百人以上はたむろしていた。
 ケインとルカより一足早くド・コリニー邸に入ったデレクはトレーにグラスを乗せ、人々の間を縫って、『カフカ』の連中を見つけ出すべく黒縁の眼鏡の奥から目を光らせていた。
「あと十分ほどでルカとケインが到着する予定です」
 耳の中に入れているイヤホンマイクから、エミリーの声がして、デレクは一瞬顔をこわばらせた。
「人が多すぎる。そちらで誰か見つけた?」
 デレクは言った。
 デレクの制服のボタンには隠しカメラが設置され、歩くと周りの様子が対策本部のバカでかいモニターに映し出されている。
 エミリーは画面に現れる人々の中から気になる者を顔認証システムにかけている。
 顔ぶれは大物の政治家夫妻、大企業のCEOから人気女優やミュージシャン、サッカー選手と、パリに滞在しているありとある著名人がその夜、ド・コリニー邸に集結しているかのようだった。
「いいえ、サインを貰いたいような人ばかりで、胡散臭い連中はまだ見当たりません」
 エミリーが言った。
 

 


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