この一部始終はイヤホンを通してルカやケインにも聞こえていた。
あれほど言ったのに!! 女にデレデレしやがって!!
ルカは屋敷に向かう車の中でイラついた。
タクシーだが、運転しているのはCILUの捜査官だ。
「しょせんあいつは、あの程度の男だよ。気にするな」
隣に座るケインは肩をすくめた。
「心配するな。君は俺が必ず護ってやる」
ケインは細見に見えるが、身体はかなり作り込んでいて、長身で、ルカより少し目線が上にあった。
あれはもう五年以上も前になる。
M工科大大学院電子工学の研究室で出会ったが、最初ケインは静かで冷たそうな感じがした。
端正な顔が一層それを強調していた。
ルカとケインの二人は、勉強熱心だが、両方ともとっつきにくいと言うのでは有名だった。
ただ、ルカの方は自己主張の強いお坊ちゃんと思われていた反面、ケインは落ち着いた、ある意味では何を考えているか分からないと言う不気味ささえあった。
そんな二人は決してウマが合ったわけではない。
が、二人とも学問への探究心は強く、ライバルとして互いに認めあい、逆に話す機会も多くなった。
しかし議論になると、ルカは熱くなるが、ケインは常に冷静にルカの意見を聞いている。
そして、聞いているかと思うと、じっとルカを見つめながら、
「ほんとに…」
「え?」
ルカは何だとケインを見やる。
「綺麗だな、君は」
急に何の関係もないことを言い出してルカの頭を混乱させるのだ。
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