自己主張の強そうな美人だ。
青年の方はブロンドで、童顔なのだろうえらく若く見える。
その目を見た時、ルカはすごいエメラルドだ、と思い、ふと、何か既視感のような感じを受け、何かを思い出しかけたが、背中の方にいたロシア人二人の言葉に邪魔された。
「最近どうだ、うまくいっているかね」
「Da。ありがとうございます」
さしずめ上司と部下か、取引先ってとこか、何者だろう?
老齢で恰幅がよく、あまり緊張感がない。
もう一人の男は長身でエリート風、背筋が伸びている。
四十代後半くらいだろうか。
「ねえ、このあと飲みに行かない?」
ルカの思考はその声で停止した。
カウンターの中で、例のニューヨークギャルがデレクの顔をのぞき込んでいるのが目に入った。
「え、いや……」
アホウ! デレクのやつ、しっかり否定しろよ!
ルカはカッカきてデレクを睨みつけた。
任務がおろそかになる事に腹を立てているわけではない事は、自分でも分かっていた。
デレクもルカの視線を感じて目を向けた。
ふいと視線を外すと、視界の端にデレクが一瞬真顔をルカに向けたのが見えた。
真顔になるな! バカ! 勝手に死ね!
視線を少し上げたその時、ルカはこちらもロシア人らしき老紳士と目が合った。
恰幅がよいだけでなく長身で大柄な男だが、不思議な表情をしている。
表情の無い表情だ。
「それらしき顔は見当たらないな」
辺りを見回していたケインは呟いた。
「そうだな」
ルカは短く返事をした。
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