「心配か? そうだな、さすがにIQ二五〇のDr.Cなんて得体の知れないやつの代役なんか、そうそうつとまりゃしないよな」
わざわざイヤホンマイクをオフにして、ケインはそう言うと、ちょっと笑みを浮かべた。
「それとも、心配なのはあのバカのことか? 今夜あの女とどうかなっちまうんじゃないかって?」
「そこまで馬鹿じゃないだろう」
揶揄するようなケインの口ぶりにルカは眉をしかめた。
「なるほどね」
ふと、ケインは自分とデレクの関係を知っているのかもしれないとルカは思った。
としてもプライベートだ、仕事とは関係ないだろう。
ケインがイヤホンマイクをオンにした途端、聞き覚えのある声がした。
「私だ」
「あ、部長、何か?」
ルカは壁の方へ向いて静かに答えた。
「実はさっきNASAの宇宙局員と名乗る者から情報が入った。『カフカ』が我々の知る人物とつながっているというのだ。急遽その宇宙局員ここで会うことになった」
「ここって……」
振り返ると人混みの向こう、ホールの入り口にグレイヘアの頭が立つのが見えた。
「策を少し練り直す必要があるかもしれん。それと、去年の銃撃戦でルカに撃たれたテロリストが、どうやら『カフカ』の元リーダーだったらしい。ルドルフ・ブィンケルマンという男だが、今彼らが男の身元を洗っている。追って連絡が入ると思う」
「本当ですか?」
ルカは聞き返した。
「まだ、はっきりした事は言えん」
「しかし、本当に宇宙局からの?」
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