『カフカ』のハインツ・ギーツェンとルトガー・フォクトだろう。
「ようこそ、Dr.C」
オーフェルベックは立ち上がり、ルカに手を差し出した。
ルカはとりあえず差し出された手を握った。
「わざわざこんな所までご足労願って申し訳ない」
一人のホールスタッフがお茶を運んで来た。
ソファに促されたルカとケインは無言のまま出された紅茶を飲んだ。
ルカは肝を据えて、少しでも時間稼ぎのために、ミルクを入れ、スプーンでゆっくりかき回した。
その間もルカはオーフェルベックの目が自分をじっくり検分しているのがわかった。
その時だった。
「今、オーフェルベックと『カフカ』の二人を確認した。顔にも声にも出さずによく聞け」
耳の中に聞こえてきたのはデレクの声だ。
やけに静かで、だがピリピリした緊張感が伝わってくる。
ルカは胸騒ぎを覚えた。
「親父が殺られた」
一瞬カップを持つ指が止まりそうになった。
何て言った?
「ラコストが殺されたんだ。俺ら側にやつらに通じてるやつがいると伝えに来た宇宙局関連の捜査員とこの屋敷で会うことになっていた。その捜査官ともども。とにかく…………、気をつけろ!」
ルカは頭から足の先まですうっと血の気が引いていくような気がした。
ケインにも聞こえているはずだったが、彼は悠然とカップを持ってオーフェルベックを見ていた。
ルカはお茶を飲むと静かに息を吐いてカップを置いた。
できるものならこの場でこいつらを全員捕まえたい、いや、できるものなら全員殺してやりたいくらいだ。
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