CIRU-EC(Critical Incident Response Unit – EC)。
アメリカ、FBIにあるCIRG(Critical Incident Response Group)のヨーロッパ支局であり、その本部はパリにあった。
デレク・ローズマリーとルカ・ワグネルはそのラコスト本部長の部屋にいた。
シャルル・ラコスト、五十六歳。
まわりから鉄面皮のように言われる男の、すっかり白髪に覆われてしまった頭を見ながら、二人は彼の話を聞いていた。
五年前、ルカがまだクアンティコにいた頃、始めて会った時はまだラコストの頭にもブロンドが残っていた。
「フランクフルト空港における爆破事件は既に知っていると思うが、その前日に、ボンで航空宇宙研究所のDr.リッターが殺された」
ラコストが徐に口を開いた。
「正確に言うと、まだ息があるうちにリッターは病院へ担ぎ込まれた。銃声を聞いたものはいなかったようだから、たまたまクリーニング屋がのぞかなければ、おしまいだった。同僚のマルガレーテ・ルンゲが殺ったことと、リッターがESAから盗んだプログラムαのことをやつらに聞かれたと、リッターは虫の息で医者にかろうじて言い残した。プログラムを開けるのはDr.Cだけだと言った、そういうことらしい。駆け付けた捜査官の顔を見ると息絶えた。奴も執念だったんだろう、妻と娘まで殺された男のな」
たまたまESAのプロジェクトに参加していたボンの航空宇宙研究所に勤務するDr.リッターが、ネオ・ナチスを名乗る『カフカ』というテログループに夫人を人質に取られ、ESAから極秘機密を盗み出させられたにもかかわらず、夫人は射殺されて見つかったという事件は、ルカも休暇の前にラコストからチラリと聞かされていたが、今度はDr.リッター当人と娘が殺されたという。
何でそう簡単に命を奪うことができるんだ。
子供の頃、ボストンで爆破テロに遭遇し、彼自身は間一髪かすり傷で済んだものの、ルカを護って吹き飛ばされた祖母の遺体や周辺の想像を超えた状況は今でもまざまざと脳裏に浮かぶ。
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