ロジァにもその言葉は聞こえていた。
――――そうだよな、グリーンカード取る手助けをしてもらったし、世話かけてる大事な上司の息子のご機嫌を損ねるのは、利口なやり方じゃねーよな……そうだな……
ロジァは自嘲する。
「では、これから、カードを披露します」
やはり帰るか、と思った時、場内はハンスの声で再びどよめいた。
ロジァは躊躇したが、やはり気になった。
「どこ行ってたかと思ったぜ」
フランツがロジァを捕まえて言った。
「フン、気になるんだろ? 実は?」
返事もしないロジァの耳にフランツは囁いた。
「知るか……」
「強がりやがって」
ハンスは一つ一つのカードをジョークを交えて読んでいく。
名前を言って構わないと思われるものは、次々読み上げる。
「書かれた名前は老若男女問わず、『それは私です』ってのが、約二十名程あるが」
どっと笑い声。
「おっと、こいつもだ。本命は私だ。名前は……ハンス・ゴルトベルガー! どこかで聞いた名だな? みんなよほど罰ゲームがやりたいらしい」
また歓声が沸いた。
「ところでアレクセイ、今までに、本命の名前はあったか?」
アレクセイは苦笑いして、Nein、と言った。
「ウーム、いよいよ車はアレクセイに近付いたぜ。さあて、これで最後だが、これがちょっと問題だ。アレクセイ、受けて立つかい?」
「え?」
アレクセイの胸のうちをまたざわめきが走る。
「『私は知っているが、きっとアレクセイの都合もあるだろうから、了解を得てから答える』……とある。どうする? アレクセイ」
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