ざわわっとホール内が注目する。
「どなたです? そのカードは?」
「フランツ・フォン・シュタウヘン」
一気に皆の目がフランツに集中する。
フランツはピアノの横に立つ。
「アレクセイ、言っても構いませんか?」
フランツが聞いた。
皆は、早く言え、とばかりに騒めき始める。
ハンスがもう一度アレクセイに尋ねた。
「発表するかい?」
ロジァは思わず、息を飲んだ。
フランツの奴……!
「それはちょっと……困るな」
しばしの沈黙の後、アレクセイは口を開いた。
「じゃ、車は俺のもんですね、ハンス! つまり俺が言おうとした相手を本命と認めたんだから」
フランツはしてやったりという顔だ。
しかしホール内からブーイングが巻き起こる。
「言えよ、フランツ、言っても構わないだろ?」
「知りたいわ、誰なの?」
「暗黙の了解じゃ、納得がいかない!」
あちこちからそんな声があがる。
それをハンスは制して、
「まあまあ、それではフランツ、せめてヒントだけでも教えてもらえないかな?」
場内はしんと静まり返る。
「ヒント……ね」
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