ミュンヘンへ行こう ーハンスー 18

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「しかし、つまりヴァイオリンじゃ、罰ゲームには面白くありませんよね? で、ピアノを披露していただくってのは、どうです?」
 これには皆が大いにわいた。
「成る程、天才ピアニストの後で、ブザマな姿を曝せというわけか? フランツ」
 アレクセイが皮肉を込めて尋ねた。
「そのとおり」
 フランツは、嘲笑するように言い切った。
「わかりました。皆さん、せいぜい笑ってください」
 アレクセイはピアノの前に座った。
 クッソ、フランツのやろう、くだらないことばっかいいやがって!
 アレクセイはイラつきながらショパンのエチュード「黒鍵」を弾き始めた。
 それでも一応そつなく弾き終えたアレクセイに、拍手喝采である。
 アンコールの声まであがる。
 これにはフランツは面白くなかった。
 皆の前で、恥をかかせてやりたかったのに、これじゃ余計にアレクセイの株があがるだけじゃないか。
 しかし、そんなフランツの不満をよそに、アレクセイは何と、先程フランツが素晴らしい演奏を聞かせた「熱情」を弾き始めたのである。
 俺に、逆に挑戦する気か? 
 フランツはほくそ笑む。
 アレクセイは意地になって鍵盤を叩いた。
 これだけやれば誰も文句はいわないだろ。
 そんなアレクセイのジレンマをよそに、ロジァは皆がアレクセイのピアノに聞き入っている間に、ホールを出た。
 ちょうど執事を見つけたので、ロジァは声をかけた。
「あ、オッサン、ホテルまで送ってくれ」
「かしこまりました。お車を回しますのでしばしお待ちください」


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