リムジンのドアを開けて立っていたのは、いつぞや、ロジァをヘリコプターで運んだことのあるゲミンゲンだった。
その顔を見てロジァはニヤリと笑う。
「よう、あんときのおっさんじゃねーか」
ゲミンゲンの方も三年前、ヘリコプターでニューヨークまで送らせたロジァのことを覚えていた。
車に乗り込もうとしたロジァをハンスはもう一度振り返らせる。
「しかし、アレクセイが心配してたぞ。もう少し待ってから…」
その時ハンスはロジァの目が明かりに映えて輝くのを見た。
「いいってっだろ? ガキじゃねんだ。やつに言っとけよ。あばよ、邪魔したな」
車は屋敷を出ていった。
ハンスはそれを見送ってから、明かりに輝いたロジァの瞳が何やら気になった。
気になったのはその色だった。
素晴らしい緑色だった。
「まさかな…」
エントランスにしばし突っ立っていたハンスだが、急に寒さを感じて慌てて屋内へ戻って行った。
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