ACT 3
ハンスがホールに戻ると、アレクセイはちょうど演奏を終えたところだった。
「さあ、そろそろ、アレクセイを勘弁してやりましょう! 後はまた楽しくやって下さい!! そして、今夜のラッキーボーイ、フランツに拍手!!」
ハンスはそう締め括ると、アレクセイを引っ張ってホールの隅へ行く。
「おい、アレクセイ、坊や、帰っちまったぜ」
「何だって?!」
アレクセイは鍵盤を叩くのにかまけて、ついロジァから目を離した自分に舌打ちした。
「あのバカ!!」
「ちょっと待った!」
慌ててホールを飛び出したアレクセイをハンスは追い掛けてきて引き止める。
「今夜は楽しかった、ハンス。皆にはありがとうって言っといてくれ」
「おい、アレクセイ!」
そこへフランツも出てきた。
「ロジァ、どこ行ったんだよ?」
「帰っちまったんだよ、たった今」
ハンスが答える。
「悪い、ハンス、車貸してくれ」
アレクセイが言った。
「何、考えてんだ、あのヤロー」
アレクセイの慌てようを横目にフランツが呟いた。
「今、車を廻す」
ハンスはまもなく自分の車を玄関先につけた。
「乗れよ」
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