アレクセイがナビシートに飛び乗ると、フランツも後部座席に続いて乗り込んだ。
「何で、お前がついてくるんだ?!」
アレクセイは面倒なことを引き起こしてくれたフランツに文句を言う。
「ロジァが心配だからに決まってるだろ?」
「そういや、あの坊や、お前に伝えとけって…」
ハンスがアレクセイに言った。
「何を?」
アレクセイは眉を顰める。
「厄介な上司の息子はとっととニューヨークへ帰るから、お前はその本命と楽しめってさ」
「な……に、言ってるんだ!! あのバカヤロー!」
ハンスはまだ、まさかと思っていたが、
「そういや再三、あの坊やにお前の本命知らないかって聞いたんだが…宝石だかなんだか、んなもん興味もねーってよ」
それを聞いていたフランツはいきなりロジァのような英語で捲くしたてる。
「何だってー? あのバカ!! だからバカだってんだ!! とんでもないもんは簡単に造っちまうバカのくせに、何でそーゆーことはわからねーんだよ!」
ハンドルを切りながらハンスは笑う。
「君の口から、そういう言葉を聞くとはな、フランツ、意外だな。あの坊やの口調そのまま」
「俺と奴とは古い付き合いでね。アレクセイなんかよりずーっと!! あのバカ、じゃあ、俺の言ったのこと気付かなかったのか?」
「お前が妙な比喩なんか使うからだ。それより、あんなこと言い出すからだ!!」
今度はアレクセイがフランツに突っ掛かる。
「あの坊やの目、見事なエメラルドだったな、そういや」
ハンスは二人のやり取りからやはりそうか、と納得する。
「あのバカは、きっと言葉どおりにしかとらなかったんだ! なんてバカなんだ!! 人がせっかく親切に考えていってやったのに、何でわからないんだ!!」
フランツは喚く。
「しかしまさか、そんなこととは…」
ハンスが溜め息混じりに呟いた。
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