ミュンヘンへ行こう ーハンスー 4

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 ロジァも着飾った面々に声をかけられたが、返事もそこそこでてんで愛想もない態度に、皆が肩を竦めて離れていった。
 フランツも、よう、とロジァに声をかけてきたが、フン、とロジァはむっつりしたままにこりともせず、腕組みをして壁にもたれていた。
 ロジァとフランツと言えば英才教育プロジェクトのメンバーだっただけでなく、その両親とスターリングが親しかったことから幼い頃から一緒に育ったも同然で、お互いが負けず嫌い同士、顔を合わせればしょっちゅう喧嘩をしていたため、どちらかというと犬猿と言われていた間柄である。
 早くから科学者としてだけでなくピアニストとしてもその才能を発揮し、天才少年とうたわれてニューヨークにも部屋を持ち、ちょくちょく宇宙局にも顔を出したりするフランツは、ロジァがDr.Cと呼ばれる存在であることを知っているし、ティムやカテリーナとは仲が良かった。
 だがロジァによくケンカを吹っかけてきたフランツにしてみれば、実は捻くれ者の好意の裏返しだったとは、最近ロジァにもわかったことである。
 さてアレクセイの予感は的中した。
 宴たけなわとなった頃、大ホールの大理石の床がパックリ割れて、中から現れたのはG社が昨年秋に発表したセダンの最高級車である。
 新車を紹介したあとで集まった面々を前にハンスは言った。
「この新車は、アレクセイの本命の恋人を見事あてた方のものになります!」
 場内には大歓声が巻き起こった。
 


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