ミュンヘンへ行こう ーハンスー 5

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  ACT 1
 
 
 実はハンスはちょっとアレクセイに意地悪をしたのだった。
 古い付き合いにもかかわらず、アレクセイは近年どうやら誰か愛している人間がいるらしいのに、自分には教えてくれないのである。
 アレクセイが人から言われるほど誰でも構わず遊ぶということはしない男だということもハンスはよく分かっていたし、彼が本気になった相手のことは自分が一番よく知っていると思っていた、にも拘らず、最近の相手について、アレクセイはどうもひた隠しにしているふしがあるのだ。
 ハンスの記憶によればアレクセイの本命の相手は今までに二人だけの筈だった。
 シャトーブリアン夫人のことはヨーロッパ中の社交界で話題になったが、ハンスはアレクセイが夫人に結構マジだったのも分かっていた。
 クライトンとの時は、まさかあんな形で別れるとは思ってもいなかったのだが、それからフリーになって久しい筈だった。
 世間で言われているアレクセイの噂の相手は、そんなに深い付き合いでないことが多い。
 アレクセイに本命がいないとしたら約八年程。
 遊んではいても、アレクセイが自分とは友人以上になれないことが、ハンスには非常に残念だったのだが、仕方がないと割り切っていた。
 割り切らねばつらいものがあった。
 アレクセイに本気になったら、アレクセイをも本気にさせない限り、天国と地獄程の差がある。
 自分もアレクセイも、遊びにかけては実にきれいに遊ぶ。
 後くされなく、そして決してヘマはしない。


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