「あんのヤロー!! 人を厄介払いしやがって!」
アレクセイの車のサイドシートに押し込められながら、ロジァは喚いた。
「おう、そりゃ、厄介だったろうさ!」
車が走りだすと、再び酔いが回り始める。
「てめ、何しにきやがった!!」
「そりゃ、お前を探しにさ。決まってるだろ? あちこち迷惑かけて、しょうもないおぼっちゃんだ。昨日の朝は家とは逆の方向から現われただろ? ティムに聞いても教えてくれないしな」
「俺が何、迷惑かけてる! 頼みもしねーのに、貴様がしゃしゃり出てくるこたないんだ!! セレブがこんなゴミ溜めうろついてて何の得にもならねぇぜ」
ロジァは酔った勢いで大きな声で喚いている。
するとアレクセイは笑いながら言った。
「追い回してただけじゃ、何の得にもならないさ」
ロジァは口を噤んだ。
「ただで、お前をお迎えにいってやるほどヒマじゃないよ」
アレクセイはハンドルを切ると、彼のアパートメントの駐車場に車を滑り込ませた。
「さあ、降りろよ。着いたぜ」
動こうとしないロジァにアレクセイは促した。
「たいした悪党だぜ、てめぇはよ」
「まあな、ストリートのボスを相手にするんなら、かなりの悪党じゃないとな」
笑いながらロジァの肩に腕を回すその余裕もロジァは気にくわない。
アレクセイは部屋に入るとそのままロジァをベッドルームに引きずっていき、ロジァに考える間も与えない。
そしてアレクセイはすぐにロジァに手を伸ばした。
避けようのない腕、唇。
アレクセイにこの時涙を見せたことで、ロジァはアレクセイに最大の弱みを握られた気がしていた。
アレクセイに与えられる官能の渦に巻き込まれ、ロジァの精神は乱れた。
乱れていろんな思いをさらにかき回される。
突き放そうとして突き放せないアレクセイの手。
認めたくないと抵抗する思い。
ロジァの身体に戦慄が走る。
力が抜ける。
甘ったるい欲情が彼の身体全てを満たしていく。
アレクセイの吐息がロジァの耳をくすぐる。
アレクセイの肢体がロジァに絡み付く。
ロジァは身を捩らせながら、アレクセイの髪をかき乱した。
―――ナンデコンナヤツスキニナッチマッタンダ
頭の奥でもう一人の自分が喚いている。
自分はこんなにも焦がれているのに、アレクセイはどうせ食後のデザートくらいの感覚で自分を誘うのだろう、ロジァは思う。
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