―――ソリャデザートダッテタマニハクイタクモナルサ
アレクセイは巧みにロジァの熱い身体を操る。
意識が暗闇に落ちる刹那、ロジァの脳裏をかすめた叫び。
―――イッソノコト、オレヲコロシテシマエヨ
明け方、虚ろに目蓋をあけたロジァは、彼の横にいるひどく美しい悪魔を見つめた。
同時に恐ろしい淋しさが押し寄せた。
その男をいつの間にか泣きたいくらいに好きになっている自分。
本当はすがり付いて泣きたい程なのに、手を伸ばせばすぐにも届くのに、彼は頑なに唇を噛むしかできなかった。
そんな悪魔に魅入られた自分がロジァは悔しくてならなかった。
アレクセイはそれ以来、何かというとロジァを誘い、引っ張り回した。
或いは、仕事の帰りに待ち伏せしてロジァを自分の部屋に連れ帰った。
そして一年が過ぎていた。
最近、アレクセイの付きまといがプッツリ途絶えた。
相変わらず、オフィスで彼をからかうのはやめないが、キャンプだ、美術館だ、何だと彼を連れ回していたのが、何も言わなくなった。
最後に、アレクセイの部屋にいた時、ある電話の相手にアレクセイは嬉しそうに話していた。
ハンス、と呼んでいた。
ニューヨークに来るらしいことを話していた。
「いやに嬉しそうじゃねぇか」
そうロジァが言うと、アレクセイが、「妬けるだろ?」などというので、
「何で俺が妬かなけりゃならねんだよ!! ノウテンキやろう!!」
とロジァは言い返した。
ロジァはビールを喉に流し込みながらそんなことを思い出していた。
確かにあの時アレクセイは嬉しそうに受け答えしていた。
自分を追い回していたのは、きっと退屈しのぎだったのだろうから、今更どうということはないが…
ロジァは袖で口の辺りを拭う。
あれだけしつこく追い回されていたのに、パタリとそれが止んで、ちょっと淋しい気もすることがまた気に食わない。
ハンスのことを、アレクセイが所属したことのあるGチームのオーナーだと言っていた。
ケンもそのハンスと会ったらしく、アレクセイとオフィスで話していたのがロジァの耳にも入った。
得体の知れない不安がロジァを襲った。
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