春の夢14

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 いつのまにか、アレクセイのアパートメントの前に立っていた。
 夜、ロジァはそこの住人であろう、一台の車が駐車場に入ろうとした時、つい一緒に中に入ってしまった。
 しかし、部屋に訪ねていくのもバカバカしいと思いながらも、出るに出られない。
 そこへアレクセイの車が戻ってきた。
 笑いながら降り立った二人の男。
 そして、見知らぬ男が不意にアレクセイにキスした。
 アレクセイは笑いながら男の首に腕を回した。
 誰も見ていない筈の場所であるからか、かなり本格的なキスだった。
 いつか美術館である女優と出くわし、いきなりアレクセイがキスされたこともあった。
 その時も、ロジァは思わずひどくジェラシーを覚えたが、今度の場合はかなりショックを受けた。
 ニュースキャスターが、美人女優の傍は勿論、彼をダンディな紳士の横に立たせてもとてもよく似合う、などと冗談めかしていっていたのを聞いたことがあるが、ロジァはそれはジョークじゃないという気がした。
 ガキと遊ぶのは飽きたんだろ。
 ロジァはこそこそこんな真似をした自分が情けないと思いながらも、涙が込み上げてくるのをどうしようもなかった。
 わかってたこった…あの妖怪め…
 バイクを走らせながら、ふっと、ハドソン川にそのまま突っ走りたい気分になった。
 時々、リコが最後に何を見たのか、知りたくなった。
 が、川に突っ込む寸前でターンした。
 心が冷えてきた。
 クッダラねー!! 何、バッカなこと考えてんだ。
 あんな妖怪どうにでもなれっての。

 
 
 
 アレクセイがロジァを誘わなくなって一ヵ月が経っていた。
 気に入っているバンドが演奏を続けていたが、ロジァは『ヘル・ストリート』を出た。
 すると、そのあとをポールが追いかけてきた。
「帰るのか?」
「ああ…」
「そのうちまた顔見せろよ。ボスがこなけりゃ話になんねー」
「ああ」
 ボスなんていっても、俺なんかそうやって祭り上げてるだけのくせにヨ…
 ロジァはバイクのエンジンを唸らせる。
 コマンドもそうだ。
 俺を局に縛り付けときたいために、あのクソオヤジ!!
 居場所が、なくなった。
 リコのやつが、勝手に死んじまいやがって、結局…また…
 どこに行けばいいんだよ、俺……


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