春の夢15

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 ハンスが帰ってしまうと、急に淋しくなったアレクセイは、ケンを夕食に呼んだ。
 ケンもハンスが気に入ったらしく、面白い男だな、退屈しない、そう言ってから、アレクセイに尋ねた。
「そういえば、あいつ、仕事は、車造ってるって言ってたけど、技術屋か?」
「あいつはそんな面倒な仕事には向かないな、造っているっていったって、親の会社が車会社だってだけだ。G社だよ。名前くらい知ってるだろ?」
「G……って、まさか、あの、ドイツの、あれか? どおりで自分のジェットとか言ってるわけだ」
「ゴルトベルガーって名乗っただろ?」
 ケンは頭を振りながら、ふうと一つ息をつく。
「お前の友達だってことを忘れてたよ。全く……」
「何言ってる。そういえばハンスのやつ、随分お前のこと気に入ったみたいだったな」
 そう呟いてから、ふとアレクセイはケンに聞いた。
「お前さ、女以外の経験、あるか?」
 ケンはアレクセイを見つめる。
「いきなり何聞くんだ! あるわけないだろ? お前じゃあるまいし」
「いや、ハンスのやつ、気軽にベッドも誘うからな。経験ないんなら教えといてやろうか?」
 みるみるケンは真っ赤になる。
「ジョークも大概にしろ! お前が言うと、嘘でもドキッとする!」
「ジョークじゃないさ」
 アレクセイは笑う。
 するとケンは、急に真面目な顔になった。
「アレクセイ、お前、そうやってロジァも誘ったのか? いい加減にしとけよな。言っとくが、お前にそんなこと言われたら、そのケがない奴でも、ついフラってなっちまうんだ。ロジァはまだガキで、しかもだ、局長の息子だぜ。知れたらクビが飛ぶかもしれないぜ」
「なるほどな、俺のクビが飛んだら、お前も淋しくなるだろうし」
「そりゃ、淋しくなる……」
 言いかけてケンは言葉を切る。
「何を言わせるんだ! バカッ」
「いや、お前はガキじゃなくて、局長の息子でもないしな。本当は俺に惚れてるから、ロジァのことにやけにこだわるとか?」
「そうやって誰かれかまわず誘うから問題なんだよ、お前は」

 


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