「なるほど、それでそのウォルフとは?」
「会ってはいない。電話が来たが。両親は怒ってたって言った。当たり前だ、まだ十四くらいのガキを男が誑かしたとなりゃ、普通の親なら…と思うぜ」
「だから、俺に忠告したってわけか」
アレクセイは笑った。
「お前は実行犯だからな。俺とは違う」
ケンは断言する。
「そういう問題じゃないだろう?」
「真面目なガキだからな、ウォルフは。一本気で。だからあいつがふざけてそんなことを言うとは思えないんだ。真剣だったんだろう、彼なりに。それを、ちゃんと断るとか、もっとうまく言うとか、そんなこともできないで、いい大人が逃げ帰ってきちまったんだもんな。きっとあいつ傷ついたんじゃないかって、あとで後悔した」
一言一言、確かめるようにケンは話す。
「お前の気持ちはどうなんだ? 電話で何て言ったんだ」
「ああ? そりゃ、可愛い友達だと思ってるさ。しかし恋愛対象としてと言われてもな…そのとおりをいってやったよ。そのうちきっと可愛い恋人が見つかるよって」
「フウン……で、例の、マダムとはどうなんだ? そっちは真面目な恋愛関係か?」
それを聞くと、ケンは驚いて顔を上げる。
「何で知ってる?」
「そりゃ、マダムはニューヨークの社交界じゃ有名人じゃないか。雑誌社二つを切り回しているやり手の才媛。旦那とは離婚訴訟中。子供が一人。キャロル・ワイルダー」
「彼女と始めてあったのは、もう随分前、まだ親父が死ぬ前で、娘のミリアムの家庭教師をしてたときだ。ミリアムは七才だったかな。でもそれからずっとそんな親しくしたことなんかなかったんだ。彼女はあくまでもミリアムの母親だったし。それが半年前、偶然出くわして」
仕方なく、ケンは白状し始めた。
「で、真剣な恋愛に発展したわけか?」
「いや、そうじゃなくてさ…」
「何だよ、煮え切らない奴だな」
「お前と違って、そう簡単に恋愛だ何だって割り切れないもんがあるんだよ!」
ケンはムッとしてアレクセイを睨む。
「しかし、寝てるんだろ?」
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