「きさまがそういうやつだったってことは、よく覚えとくぜ。バッキャロ」
休憩室で戯れている二人の横を通り過ぎる冷たい視線に、アレクセイは気づいてその後ろ姿を目で追った。
以前からカテリーナの態度は、思い過しでなくアレクセイに対して冷たく、きついように思われた。
自分がロジァを連れ回しているのがやはり気に入らないのだろう。
そしてどうやらロジァも、今までにも増して冷ややかである。
アレクセイはここのところ放っているせいかも知れないとも思う。
ご機嫌を取らねば、ロジァはむくれているだけだろう。
そう考えた時、ケンの言葉が頭に浮かぶ。
「まだ十六の、坊やなんだぜ? しかも、局長の息子で」
「あんた、ロジァなんかつけ回して何が面白いんだよ!! もう、放っとけよ!! ロジァに構うなよ!!」
極めつけ、いつぞやスターリング家を訪れたアレクセイは、ロジァの弟ティムに怒鳴りつけられた。
どうやら俺は、非常に歓迎されないことばかりをやってるのかもな…
スターリングに呼ばれた時、ヒヤリとしたのも事実だ。
遊びたいのなら、わざわざ危ない橋を渡るようなマネをしなくても…。
それはその通りだ。
遊びたいのなら。
アレクセイはガラにもなく、大きく息をつく。
いつになく沈みがちな自分をもてあましていた。
そんなアレクセイを見て、ある時、ミレイユがその肩を叩いた。
「何か、元気なくない?」
二人はその夜、メンバーの大人たち行きつけのバーに寄った。
「反対されてるの。パリのパパとママに。猛反対」
ミレイユが口を切った。
「マイケルのこと?」
「そう。彼が黒人だからって」
「で、君はどうするんだ?」
「私は反対されたって動かないわよ。そりゃ、祝福されたいけど、できればね。ただ、マイケルが…」
ミレイユは口ごもる。
「マイケルが何だって?」
「両親に話したって言ったら、反対されただろって。結婚は無理だって言うのよ。私は反対されても結婚したいって言ったのに…彼は少しお互い考えてみようって…それからマイケルとぎくしゃくしてる」
アレクセイはフウッと息をついた。
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