大きな問題を抱えた同僚に同情した。
「でも、私は彼じゃなきゃ嫌なの」
ミレイユは涙を見せた。
彼女をなだめ、彼女が落ち着いた頃、アレクセイはポツリと言った。
「恋愛には問題がつきもんさ。結婚となるとさらにね」
するとミレイユは顔を上げた。
「あなたも何か沈んでたわね、ここのとこ」
「まあね」
アレクセイは苦笑いする。
「まさかあなたも恋愛で悩んでるなんてことないわよね?」
「ケンにしろ君にしろ、俺だって人間やってんだからな、恋愛問題で悩むことだってあるんだぜ」
「まさか、相手はカテリーナ?」
アレクセイはミレイユをびっくりした顔で見つめる。
「どうして?」
「だって、あの子も最近変だから、ちょっと聞いたのよ。あなたにつんけんしてる気がしたから」
「それで?」
「別にそんなことないって言ってたけど」
「そうか…」
アレクセイは溜め息混じりにグラスを傾ける。
「なあに? やっぱり彼女と何かあったの?」
「ちがうんだ。…でも、彼女の機嫌を損ねているのは確かに俺だろうな」
「どういうこと?」
「そういうことさ」
「話してくれたっていいでしょ? 同僚なのに」
確かにミレイユなら真剣に考えてくれるかもしれないが。
「ウン…そのうちにな。悩んでいる相手は別の人間」
「求愛者が多過ぎて?」
ミレイユが笑いながら尋ねた。
「冗談…マジに考えてるんだぜ。ちょっとやばい相手だし、深みにはまらないうちに、こいつはやめた方がいいかもって思ったら、沈み始めた」
「まさか、人妻とか?」
アレクセイは笑みを浮かべて首を振る。
「それなら引かない。もっと厄介かもな」
「でも、例え相手が男性だとしても、悩みそうにないしな。あなたの場合」
「ハハ…それは言えてる…俺には反対するような家族もいないしな」
「でも相手の家族が反対するってことはあるかも」
その台詞はアレクセイの心をドキリとさせる。
「ウン…それかもな…ちょっとニュアンスが違うが…つまりは」
「じゃ、相手は本当に男性?」
ミレイユの声が大きくなった。
バーテンダーがミレイユとアレクセイを目を丸くしてみた。
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