「嘘よ! アレクセイは何もしてないわよ」
ミレイユが叫んだ。
「じゃあ、何で、アレクセイが君の部屋から出てくるんだよ。偶然にも通り掛かったとかいうなよ?」
マイケルが言った。
「あれは私が彼にコーヒーをすすめただけよ!」
ミレイユが言い返す。
「コーヒーをすすめたとは、言い方もあるもんだな」
マイケルも怒鳴る。
「俺が辞めりゃいいんだろ? 罪人は俺」
アレクセイは露悪的な台詞を吐く。
「こんなわからず屋のために、何であなたが辞めることがあるのよ!」
ミレイユはアレクセイに向って喚いた。
「そうか、やっぱりこいつの肩を持つわけだ?」
マイケルが負けずに怒鳴る。
「ええ、そうよ!! アレクセイはね、小さいことにこだわってばかりいるような誰かとは違うわ!!」
「落ちつけよ!! 皆」
ケンはみんなを宥めようとしたが無駄だった。
「誰かってのは俺のことか?!」
とばかり、マイケルはミレイユに詰め寄った。
アレクセイという存在がここにいるだけで、ケンはいつかこんなことが起きるのではないかと思っていたが、状況は収拾がつかなくなってきた。
「そうよ! あなたよ!! ボクサーの拳は凶器にもなりかねないって言ってたのはどこの誰よ!」
ミレイユはマイケルに言い返す。
「うっせーんだよ!! てめーら!!」
ついいらついたロジァはそう怒鳴っていた。
怒鳴ってしまってから、はっとする。
一瞬静まり返った空気。
全員の視線が今度はロジァに集中した。
しまったと思った時はもう遅い。
「だから…クソ…」
言いかけてロジァは頭を掻いた。
ボロを出すまいと、結構うまくやってきた。
もし、自分が街のギャングとみなされているグループのリーダーだなどと知れるとまずいことになるかも知れない。
コマンドのメンバーも完璧に優等生のボスだからこそ、納得している筈だと思う。
当初は、自分に少しでも非がないような完璧さでうまく立ち回り、スターリングに何も言わせずに、とっととコマンドなどやめてやる、と思っていた。
ところが最近はその逆で、コマンドをやめたくないために、ボロを出すまいとしていたのだ。
しかしだ、こうなってしまったからにはもういい、どうともなれだ、とロジァは開き直った。
もうお断わりだ! 今度こそ、おサラバしてやる!!
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