ケンにもとりつくシマがなかった。
「今更、優等生ぶらなくてもいいんじゃないのか」
そんなロジァを横目に見ながら、アレクセイが自分のデスクからロジァに聞こえるように言う。
ロジァはそれを無視した。
内心はカッカきていた。
ロジァはアレクセイとの意見の食い違いで自分が殴った、とスターリングに言ったのである。
スターリングはそれがロジァのやめたいがための策略であると感づき、自分の言動を反省していた。
そして、とにかく今後騒ぎを起こさぬよう、と言っただけであった。
「処分はどうするんです?」
「保留だと言っている。仕事に戻れ」
ロジァの質問に、スターリングはそう言って背を向けた。
ロジァはムカつきながら局長室を出たが、出たところで思い切り壁を殴りつけていた。
「あんの…!! フルダヌキのクソジジイ!!」
ロジァは、もうきっぱり、アレクセイとは縁を切ろうと思った。
ハンスという男といちゃついていたと思えば今度はミレイユである。
冗談じゃねーよ…あのクソヤロー…
ロジァはそのことを事実だろうと信じ込んでいた。
もう振り回されるのはご面だ。
四人の大人たちのここのところのランチタイムの話題はマイケルとアレクセイの事件とロジァだった。
「びっくりしたわ」
すっかりいつもの元気なミレイユである。
「ロジァったらド迫力! 見なおしちゃった」
「街のゴロツキのってどういうことだ?」
マイケルが口にした。
「ギャング、にくくられているが、実際は銃や薬なんかでトラブルを起こしているギャングに対抗して押さえつけているって感じだ。ありゃ、すげえでかい組織だ。『ブラック』って」
バーガーに齧りつきながらケンが答えた。
「知ってたの? ケン!!」
ミレイユが驚いてケンの顔を覗き込む。
「まあね。ただ、彼らはどちらかというと、騒ぎを起こす奴らを沈めてるって感じなんで、一応警察も静観している。無論、よく思っているわけじゃない。ロジァはその『ブラック』のボス。下は十二才くらいから上は二十代くらいの連中が集まってる、組織だよ。実はスターリングもロジァのこのことで結構頭を痛めていたらしい。もともとロジァはカテリーナと一緒にここの英才教育のプロジェクトにいたんだが、どうもスターリングに反抗して飛び出したってことだ。それからどういう経緯かは知らないがブラックのボスになった」
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