翌日、コマンドの面々は何事もなかったように黙々と仕事をしていた。
アレクセイの頬のガーゼが痛々しげに見えただけである。
局内ですれ違う者が一様に、どうしたんだ、と聞く。
アレクセイは適当に受け答えしている。
ハンスからアレクセイに電話があったのは、そんなある日のことだった。
一度は断ったのだが、ハンスの言うには、ドライバーがテスト走行中にクラッシュして大怪我をしたために、アレクセイに是非引き受けてほしいと言うのである。
「だから、あれは俺以外使わせるなって言っただろ」
アレクセイは一瞬躊躇したものの、結局彼は引き受けることにした。
それが彼の進退問題にもなりかねないこともよく分かった上で。
コマンドは平和そうに見えた。
ロジァは、一体あの時の彼は何だったのだろうというくらい、常に冷静で表情を崩さない、いつもの『ボス』だった。
だが、コマンド内は不気味に静かだった。
ケンはそれがアレクセイのせいだという気がした。
アレクセイはここのところ、ロジァをからかうことも忘れたようである。
ロジァはアレクセイに対してつんけんしていた棘が取れた、かのようである。
その実どちらかというと、互いに極力接触を避けている、そんな雰囲気だとケンは感じていた。
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