春の夢33

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 翌日、コマンドの面々は何事もなかったように黙々と仕事をしていた。
 アレクセイの頬のガーゼが痛々しげに見えただけである。
 局内ですれ違う者が一様に、どうしたんだ、と聞く。
 アレクセイは適当に受け答えしている。
 ハンスからアレクセイに電話があったのは、そんなある日のことだった。
 一度は断ったのだが、ハンスの言うには、ドライバーがテスト走行中にクラッシュして大怪我をしたために、アレクセイに是非引き受けてほしいと言うのである。
「だから、あれは俺以外使わせるなって言っただろ」
 アレクセイは一瞬躊躇したものの、結局彼は引き受けることにした。
 それが彼の進退問題にもなりかねないこともよく分かった上で。
 コマンドは平和そうに見えた。
 ロジァは、一体あの時の彼は何だったのだろうというくらい、常に冷静で表情を崩さない、いつもの『ボス』だった。
 だが、コマンド内は不気味に静かだった。
 ケンはそれがアレクセイのせいだという気がした。
 アレクセイはここのところ、ロジァをからかうことも忘れたようである。
 ロジァはアレクセイに対してつんけんしていた棘が取れた、かのようである。
 その実どちらかというと、互いに極力接触を避けている、そんな雰囲気だとケンは感じていた。
 

 


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