春の夢36

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 力もかなりあるし、殴られたら、一巻の終わりという気もした。
 だが、ケンはひるむつもりはない。
「疲れているから、君と遊ぶ気力はないんだ。悪いけど」
 仕方がない、蹴りを入れて、取りあえず逃げるか、ドアは後ろだっけ…そんなことを考えていた時、助け船が入った。
「何やってる? 誰だ? そいつ」
 低い迫力のある声だ。
 振り向くと、精悍な顔つきの黒人青年が立っていた。
 ケンに難癖をつけていた男はその青年に言った。
「ポール、こいつロジァに用があるんだって言うからよ」
 ポールは眉を顰める。
「手を離せ」
 今度はケンに向い、
「何者だ? お前。ロジァに何の用だ?」
 と聞いた。
「俺はケン。ロジァの友人だ」
「皆ロジァの友人だって言うぜ」
「だから…君、ポールっていったね、『ブラック』の?」
 するとポールはにやついた。
「ああ。ロジァは戻って来るかどうかわからねえぜ。バイクで飛ばして来るって行ったっきりだ」
「どこへ行ったかも? ひとりで?」
「最近、俺たちを寄せつけねえ…」
「やっぱり、友達が死んだことをまだ引き摺ってるのかな? ロジァは」
 自分に向ってそんな聞き方をした者はなかったので、ポールはじっとケンを見つめた。
「そりゃ、まあな、それもあるだろうさ。何の用か知らねえが、坊やのうろつく時間じゃないぜ。今夜は帰んな。お前が来たってことは、ロジァに話しといてやるからよ」
 完全にガキ扱いされていると、ケンは溜め息をつく。
「坊や坊やって、俺はもう大人なの。君たちよりずっと」
「ほう?」
 ポールはニヤニヤしながらケンを見つめる。
 ロジァが階段を降りて来たのは調度その時だった。
 ジーンズの上にはレザージャケット、ブーツを履き、手にはヘルメットをぶら下げていた。
 ロジァはかけ降りるなり、ケンを見つけて怒鳴った。
「ケン!! 何やってんだ? あんた、そんなとこで!!」
「やあ、ロジァ。よかったよ、会えて」
 ケンはほっと胸を撫で下ろした。
「実は君に相談があるんだ」
 にっこり笑うケンは、ロジァも始めから何となく強く出られない存在だ。

 


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