春の夢40

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 ミレイユでなかっただけだ。
「あいつ俺には必死で弁解してたけどな。誰かれ構わず、相手にしてるわけじゃないって。俺も、マスコミに踊らされて、結構色眼鏡で見てるとこあるからな」
 ケンがそう言うのに対して、ロジァは苦笑する。
「同僚には、いい顔してえんだろ? けどよ、局長のクソジジイが、俺の言うことなんか聞くかわからねーぜ。まあ、俺が辞めるか、奴が辞めるか、どっちがいいかってとこだな。そうだ、いい方法があるぜ。こんだ、俺が奴をぶん殴るんだよ。そうすりゃ、レースだなんだなんてこた忘れて、俺を辞めさせるかもな」
「ロジァ!!」
 乾いて冷えきったロジァの目。
 どうしてそんな目をするんだ?
 ケンは思った。
 ロジァは出て行った。
 ジョーがロジァがドアを閉めるまでを見送って尻尾を振っていた。
 ケンは溜息をつき、ベッドに寝転がって、天井を見上げた。
「なんて目をするんだろ…」
 何者も寄せ付けない、獣の目だ、と彼は思った。
 それはあの鉄面皮の司令官と同一だという気がした。
 一年、本当に少しずつ、彼が打ち解けてくれてきたように思っていたのに。
「アレクセイか…鍵は…やっぱ…それで、俺のせいで、ロジァに途方も無い不信感を与えたとか?」
 ケンはベッドに起き上がり、呟いた。
 いきなり、とんでもない罪を犯した気分になった。
 その時、ポケットの携帯が鳴った。
「やあ、ケン? ハンスだ。覚えてるか?」
 その声を聞いてケンはちょっと驚いた。
 G社の御曹司である。
「もの覚えはいいんだ。元気そうだね、相変わらず。そういえば、予選、アレクセイが出てたんでびっくりしてるんだ」
「君にも話してなかったのか? そうなんだ。どうだい、明日、こっちに来ないか? アレクセイが優勝するところ、君もみたいだろ?」
「すごい意気込みだね。そりゃ、見たいけど」
「よし、じゃ、明日、迎えをやるから」
 ハンスはとっとと先を決めていく。


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