「しかし、明日はアレクセイの奴に休み代わらせられて、仕事なんだ」
「そっちの都合に合わせるよ。当日でも構わない。P.P.は間違いなしだ、と言いたいとこだが、実は、何かあいつヘンだからさ。何かあったのかと思って」
ケンを胸騒ぎが襲う。
「ヘンって? どう?」
「いや、無理に俺があいつを引っ張りだしたんだが、結構いつも軽口叩いている奴がやけに静かなんだ。それに使わない方がいいと言っていたエンジンを使いたいと言い出すし」
「どういうことだ? 何? 使わない方がいいエンジンって?」
「あいつが退屈しのぎに考えたやつ、俺が造ったのさ。それが凄いパワーなんだが、奴の言うには、下手するとエンジンがぶっ壊れる、一%でも危険性があるなら使わない方がいいと…ところがそれを始めからフル回転しっぱなしなんだ」
「暇つぶしに考えたエンジン? 何考えてるんだ、あいつ!!」
ケンは電話口にもかかわらず激昂する。
「ハンス、もう一人、誘ってもいいか? 友達」
「もちろん」
ロジァを誘うのには、翌日が仕事だったことが好都合だった。
ケンは、頃合を見計らって、次の日付き合ってほしい、とロジァに言った。
「どこへ?」
「それは行ってからのお楽しみさ」
ロジァは迷ったが、ケンに頼むよ、と言われては何も言えなくなった。
「君の家に迎えにいくよ」
ロジァはそう念を押すケンを訝しげに見た。
午前八時頃に、ケンはスターリングの家に車をつけた。
しかし、時間をとっくに過ぎているのに出てこないので、仕方なくチャイムを押した。
だが、ドアが開いて現われたのはティムだった。
始めてみるティムはブルネットの髪の華奢な美少年だった。
「あ…朝早くに済まない、研究所の同僚でケンというものだけど、ロジァは? まだ、寝てるのかな? 約束してあったんだが……」
「昨夜は帰ってない。どっかで飲んだくれてんじゃねーの?」
しかしその美少年の口から出た言葉はロジァそのもの。
「参った…な」
すっぽかされたか…と思う。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます