だが、案外強情なケンはなるべく穏やかに聞いてみた。
「どこにいるか、心あたりないかな?」
「さあ…わかんねーな。『ヘル・ストリート』か、ポールんとこ辺りか」
「ポールの家はどこか、知ってる?」
ティムが教えてくれた家に、ケンはまず行ってみることにした。
『ヘル・ストリート』は前回のこともあり、何となく後回しにしたかった。
教えられたサウスブロンクスにある古いビルの三階の突き当たり。
何度かノックしたが、反応はない。
いないのか、と仕方なく諦めて『ヘル・ストリート』に行ってみようと踵を返した。
と、ドアが開いた。
振り返ると、ポールが上半身裸で顔を覗かせた。
「やあ、朝早くに済まない。ロジァいないかと思って」
ポールはニヤニヤしている。
「あん時の坊やじゃねーか。ま、入りなよ」
ケンは何も考えずに中に入った。
すると、中には四、五人の少年がゴロゴロしていた。
「ひどい煙だな」
ケンは顔を顰める。
濛々と立ち篭めた煙草の煙、空になった酒ビンがあちこちに転がっている。
「来なよ」
ケンはポールに手招きされ、次の間のドアをくぐった。
ベッドが一つ、脱ぎ捨てた服が無造作に放り出してある。
すると、ポールはドアを閉めた。
振り返ったケンをポールはいきなりベッドに押し倒した。
「ちょ…何」
ケンは慌てて抵抗する。
「ちょうどオンナ、欲しかったんだが、坊やでもいいかと思って…」
ポールはケンをぐいぐいベッドに沈める。
「ロジァ、探してるんだって! 離せよ」
「抵抗されるとますますソソるよな」
「やめろって…」
少ししてドアが開いた。
「おい、ポール…」
入ってきたのはずぶぬれでタオル一枚腰に巻いただけのロジァだった。
「てめ、何やってんだ!!」
「ロジァ!! やっぱりいたのか。約束だぜ」
「ケン…」
ロジァは約束を忘れたわけではなかった。
だが、天の邪鬼がすっぽかしたい気にさせたのだ。
「あんたもバッカだな…ポールは男も好きなんだぜ? ノコノコこんなとこまで来るからだ…」
ポールは尚もケンを放そうとしない。
どころか彼のシャツをはだけ、そこに顔を埋めてくる。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます