「おもしれーみものだな」
ロジァがニヤリと笑う。
ケンはさすがにビビった。
暴れながら叫ぶ。
「ちょ…待てって! 今日は予定があるんだって! また今度にしてくれよ! おい、ロジァ!」
何だって、こう、誰も彼もがみさかいなしなんだ!
こないだだって、アレクセイの奴、寝ちまわなけりゃ、本気でやってたかも…しかも、ハンスは気軽にやるって?
冗談じゃない! ロジァまで!!
ケンは心の中で喚き散らす。
「そのくらいにしとけよ」
ふいに、ロジァの静かな声がした。
「これからって時に、何だよ」
不服そうにポールが顔を上げる。
「こいつと約束があんだよ!!」
睨み付けるロジァに、チッと舌打ちしてポールはやっとケンを放した。
ケンは肩で息をついている。
「……ジョークは……ほどほどに……してくれよ」
「ジョークなもんか。ポールはあんたが気に入ったんだろ」
ロジァはジーンズをはき、シャツを着た。
ポールは煙草を銜え、
「また、今度な、坊や」
とニヤリと笑う。
ケンは慌ててシャツのボタンをとめ、ベッドを降りた。
「時間がないんだ。急いでくれ」
「何なんだよ、一体」
ケンはロジァの腕を掴んだまま、階段を降りる。
「車、下に停めてあるから」
約束をすっぽかされても尚、探しにくるあたり、いい根性をしていると、ロジァは思う。
しかも立ち直りが早い。
ケンはロジァを車に乗せて自分の家に戻ってきた。
とっくに、ヘリコプターが庭に待機している。
ロジァの腕を引っ張って慌てて駆け付けると、渋い中年の男が一人立っていた。
「Mr.ロウエル?」
固いドイツ語訛りで男が聞いた。
「あ、そうです。遅れて申し訳ありません。彼はロジァ・スターリング」
「どうぞ、こちらへ」
ケンはロジァの腕を引っ張ってヘリコプターの前に出る。
「どこ行くんだよ、ケン」
うさん臭そうにロジァは尋ねた。
「行けば分かるよ」
ケンは笑った。
三人が乗り込むと、間もなくヘリコプターは舞い上がった。
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