春の夢45

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「Dr.リワーノフ、何故君がここに?」
 ベッカーは厳しい目つきで尋ねた。
「友人の葬式なんです。ここはそっとしておいてくださいませんか?」
 するとベッカーの後にいた部下のひとりが言いかけた。
「しかし彼はもしかしてロシアの……」
 ベッカーはそれを制した。
「よろしい、局長にはそう報告する。但し、見張りはひとり付けておく」
 そう言い残して引き上げて行った。
 例え今は宇宙局にいるとはいえ、ベッカーはエッシャーが空軍から連れてきた、有能な軍人だ。
 そのベッカーが何故ああまで必死になってロジァを追い回していたのか。
 その答えは、スターリングの息子というだけではない、ロジァが彼らをさえ動かすほどの何物か、だからだ。
 あの時、ロジァは身体中で叫んでいた。
 だから何だというんだ?!
 リコは死んだ。
 ―――事実はひとつだけだ。

 

 

 
 ―――それがいつか……だ
 ハッと我に返ったアレクセイは心の中で呟いた。
 自分の計算に間違いはない。
 必ずそれは来る。
 しかし、その時間的な誤差はあるに違いない。
 果たしてうまくゴールするまで、エンジンが持ちこたえられるか、それとも……
 何のためにそんな自虐的な賭けをする気になったのか…。
 もはや長官の叱責は覚悟している。
 或いはその時にはクビがつながっているかどうかも分からない。
 

 

 唸りを上げて目の前を走り去るレースカーを見送ってから、ケンは気になっていることをハンスに問い正した。
「ああ、あのエンジンはパワーがあるが、下手をするとリミッターが聞かなくなってぶっ壊れるから、使わない方がいい、てなことをアレクセイは言ってたんだ。それが、ずっとパワーフル回転で走り続けている。あいつがデタラメを言ったとは思えないし、ちょっと異常なくらいのパワーなんで、薄気味悪くなってな…」
「何だよ、どういうこったよ?!」
 ハンスの話を耳にしたロジァが割り込んできた。
 ハンスは始めてこの少年をまともに見た。
「ああ、あのマシンのエンジン、アレクセイが退屈しのぎに考えたエンジンだそうだ」
 ケンが答える。
「アレクセイが?」
 ハンスはじっとサーキットを睨み付ける緑の目に気付いた。
「アレクセイのファンなのか? 坊や」
 ロジァはカチンとくる。
「誰がだ!! 冗談じゃねーや」
「ティーンエージャーの同僚は彼だよ、ハンス」
 ケンが言うと、ハンスはほう、と笑う。
 


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