局内でも、朝一番のニュースだった。
だが、ロジァは目を合わせようともしない。
アレクセイは、その背中を見つめながら苦笑する。
ロジァが意地になっているのがケンにも分かった。
アレクセイが炎に包まれた時、真っ先に飛び出したのはロジァだった。
それにしたって、とケンは思う。
アレクセイがここにいることで、何かが起きる気がしていた。
そう、カテリーナか或いはミレイユか、そのどちらともかとアレクセイとの間に。
ところが、だ、何とアレクセイのバカが手を出したのは、ボスだったとは。
相手は子供なんだぞ……と奴を脅したが、どうやらロジァは奴にイカれてる。
どうするんだよ、傷が浅いうちに、何とかしろよな、アレクセイ。
それとも……
ケンは心の中で呟きながら、アレクセイとロジァの背中を交互に見やった。
アレクセイが戻ってくると、ミレイユがさっそく聞いた。
「どうだったのよ?」
「今回は見逃してくれるそうだ。まあ、昨日クビがふっ飛んでたら、見逃すも何もなかったけどな」
「残念だったよな。飛ばなくて」
アレクセイの言葉に思わずロジァはカッとなって口を出していた。
思い切りのいい皮肉に、皆がロジァを見る。
「そうだな、ボスとしちゃ、目障りなのが消え損ねたからな」
アレクセイの皮肉の応酬にロジァは胸を切なくする。
あの時、本当にアレクセイが死んだと思って、息が止まりそうだったのだ。
第一、壊れるかもしれないようなエンジンを使って自分から危険に挑戦するなんて、バカ野郎のすることだ。
そこまでバカとは思ってもいなかった。
ロジァは唇を噛む。
ああ、もう知るもんか。
勝手にくたばるがいいや。
リコの奴みたいに……!!
どうしようか……
アレクセイはグラスを傾けながら考える。
どうしたらいい?
アレクセイはフウッと息を吐いた。
放り出したくはない。
放り出したくはない、が、またひどく拒否されるのが辛い。
だからといって、結局死に損ねてしまったし、ここから逃げ出すこともできないでいる。
どうしたらいい?
アレクセイはもう一度誰にともなく呟いた。
忍びやかに夜が彼の心を包む。
窓から見える世界は一面の光の渦。
暖かく、冷たい、そんな矛盾を含んでいる。
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