ケンは不思議と人の心を読むことができる。
それはアレクセイも知っていたが、まさか、自分とロジァのことを気づいているとは思わなかった。
改めてケンに『十六の子供』などと言われてみると、アレクセイの心は揺らがないではなかった。
ニューヨークにきてからも相変わらず、アレクセイはマスコミの注目を浴びていたし、クリスマスシーズンも華やかな噂の中にいた。
それが今、ここにきて彼が未だ経験したことのない相手との関係にアラームが鳴り始めていた。
関係といっても、こちらが一方的に近づいただけだと言われてしまえば身も蓋もない。
相手は冷静かつ完璧なコマンドのボス、ロジァ・スターリング。
しかも未だ相手にしたことがない十六歳のこども。
これが実は裏の顔を持つ強か者だとは、今のところコマンドの中ではアレクセイしか知らないことだ。
どうやらその裏の顔も、宇宙局がロジァをコマンドのボスにしなくてはならなかったひとつの要因らしいが、もっと別の重要な理由があるのだろうと、アレクセイは薄々感づいていた。
おそらくそれが何であるかも。
リコが死んだのは昨年の秋だった。
数日間雨が降り続いた後で、見つかったリコの身体は水を吸って膨れあがっていた。
ロジァの仲間だったリコはクスリ漬けになり、ハドソン側にバイクごと突っ込んだのた。
アレクセイは正気を失いかけたロジァを抱いてやらずにいられなかった。
おそらくロジァにとって自分自身でつきあえる大切な存在だったに違いないリコの死は、ロジァにひどいダメージを与えたのだ。
以来、何かにつけてはロジァを引っ張り回している。
だがロジァにとっては、誰であろうが遊びの域を出ない、誘われて気分がのればOK、というところだろう。
自分がロジァに好かれているとは思っていない。
アレクセイが花から花へ渡り歩くドンファンのように噂されていても、誤解されている部分が多分にある。
むしろ本気になって痛い目にあった苦い経験が二度もあった。
恋が永遠に続くなどと思う程ガキではないつもりだ。
そのうちロジァにも可愛い恋人ができるかも知れない。
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