或いはどうやらロジァを好きらしいカテリーナとどうかなるかも…その時には笑って『しっかりやれよ』と言ってやればいい。
そんなことを考えていた筈だった。
口を聞けば憎まれ口を叩くが、ロジァがまんざら自分といるのが嫌でなさそうだ、と勝手に解釈し……。
それまでの相手との時のように、洒落た台詞や、恋の手管、優雅な雰囲気、そんなものとはかけ離れているが、一緒の休みの日には、愛猫(といってもクーガーだが)アーニャとロジァを連れてキャンプに出掛けたり、ニューヨークのいろんな場所をロジァに案内させたりするのが楽しかった。
最近はキャンプにはまっていた。
上等のワインやコニャック、必要な材料を最低限下拵えを済ませて持っていき、その場で獲れた素材と共に自然の中で豪華なディナーというのが、大体のパターンである。
ケンやマイケル、ミレイユを誘い、アレクセイが大自然の中で高級レストランの厨房顔負けのディナーをテーブルにセッティングすると、決まって、贅沢な奴だ、と皆が笑う。
しかし彼の料理の腕は認めているので、大概は満足して帰るのである。
それがこの秋頃には、連れていくのはロジァになった。
それでも、仲間から連絡があればロジァはフイと姿を消すし、クリスマス近くなると、華やかな世界はアレクセイを放っておいてくれなかった。
いつのまにか彼はニューヨークの社交界の場でも知らぬものはないという存在になってしまった。
一流の財界人やその令夫人令嬢、令息だの、或いはハリウッドの人間たち、或いはスポーツ界のスタープレイヤーといったセレブたちが勝手に近付いてくる。
そして彼をパーティや遊びに誘いたがった。
仕事を理由に何度か断っていても、そのうち行かざるを得ないはめになる。
さらに着飾ったレディたちとのオペラ、豪華な食事、たかがそれだけで、待ってましたとばかりにプレスは騒ぎ立てる。
アレクセイという存在自体がそうさせないではいられないのだ。
「俺はスターじゃないんだぜ。俺を追いかけて何が面白いんだ」
彼のぼやきは誰も取り合ってはくれない。
だが結局その一夜の恋は一夜で終わってしまうことが常だった。
最後の恋人と思ったブルースとの別れから、アレクセイは恋愛に対して妙に臆病になっている。
そんなことを言っても誰も信じてはくれないだろうけれど。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます