春の夢7

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    ACT 2
 
 
 旧友ハンス・ゴルトベルガーから週末にニューヨークに行くという連絡を受け取ったアレクセイは、彼と久しぶりに会えることを喜んだ。
 ヨーロッパの貴族や、裕福なブルジョワの家庭に育ち、贅沢三昧で遊び回っているジェット族の友人の中では、それなりに人間的で、できた男だとアレクセイは思っていた。
 ハンスは、育ててくれた厳しいばあやのおかげで物事が分かる人間になったのだ、などと言う。
愉快な男である。
 アレクセイの苦い恋愛のことも知っている貴重な友人だった。
 少なくとも彼にとっては。
 ハンスがアレクセイに対してどういう思いを抱いていたかは知らなかったからである。
 ハンスは、アレクセイがF1に参戦する直接のきっかけを与えてくれた人間だった。
 世界でも指折りのドイツの大手自動車会社、G社CEOの御曹司で、現在取締役についている。
 ハンス自身、F3からF1まで参戦し、入賞経験もある車好きだ。
 アレクセイは、いろいろなもやもやを吹き飛ばすべく、ハンスと飲み、語り、笑った。
 愉快で陽気なハンスとは、一日中ベッドにいたとしても飽きることがない。
 終始気分がいい。
 アレクセイはそんなハンスと、知ったかぶりをしてニューヨークの街を案内しながら、遊び回った。
 ハンスはすっかり科学者の顔になってしまったアレクセイに、また自分のチームに参加しないか、としきりと誘う。
「仕事があるからな…それはどうか分からないが…いいものを見せてやるよ。あんたの喜びそうなやつ…」
 アレクセイはそう言いながら、書斎のコンピューターを立ち上げる。
 そして表れた画面に、ハンスは釘づけになった。
 明らかにF1エンジンの設計図である。
 アレクセイはいろんな方向から角度を変えて、ハンスに説明した。
「エネルギーを無駄遣いしないシステムだ」
「これは………」
「少ない燃料でかなりなパワーを引き出してくれるはずだ」
「確かにパワフルだ……」
 ハンスは興奮気味に言った。

 


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