東京へ行こう -ハンスとケン- 10

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    Act 2

 八畳の居間に低いテーブルを囲んで、いや、六人に対してケン一人というような感じで座布団にそれぞれが鎮座した。
 ケンの父純也の弟文也と奈美夫妻、長男の純、祖父母の純一、朝子という岡本家の面々に、信道と呼ばれた少年もついでに座ってマジマジとケンを眺めている。
 座布団に座るのはあまり経験がないものの、父親が空手をやっていたらしいというので、道場に数年通ったこともあり、正座は問題がなかったが、この狭い空間にこれだけの人間がいるのがケンは少しばかり居心地が悪かった。
 奈美が出してくれた茶卓の上のお茶をしばらく眺めながら、何やら誤解があるらしいとケンは頭を巡らした。
 沈黙を破ったのは、先ほどからケンに対して剣呑な視線をもろにぶつけている純だった。
「それで、ちゃんと説明しろよ」
 どうやらこの純だけは英語が堪能らしく、それはケンとしても助かったのだが。
「僕は」
 どう説明していいか迷いながら、ケンは口を開いた。
「生まれて間もない頃、不幸にして両親が事件に巻き込まれて亡くなったため、キース・ロウエルに引き取られて育ちました。両親のことを聞かされたのは十五歳の時です。事件当時、IDやパスポートなども盗まれたため、身元がなかなかわからなかったようですが、その後の調査で身元や日本の家族のこともわかりました」


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