ルーツは笑いの絶えない明るい一家だったのだと、しみじみ感慨を覚え、思い切って日本に来てよかったとようやくそう思えた。
「せっかくケンさんが来てくれたんだから、今夜は奮発してお寿司にしましょ!」
奈美が言った。
「お蕎麦はお寿司のあとね」
途端、わあっと少年たちが歓声を上げる。
「信道、お前部外者だろ?」
「かたいこと言うなよ。幼馴染じゃん」
大晦日の夜は本当は蕎麦を食べて、十二時近くになると除夜の鐘を聞きながら年明けを祝い、神社とかに初詣に出かけるのだと、ケンは純から説明された。
「へえ、初詣か、面白そうだな」
「じゃあ、特別に俺が連れてってやるよ。寝ちまうなよ?」
「大丈夫、飛行機の中で十分睡眠は取ったから」
さらに日本の正月はまず雑煮を食べておせち料理を食べるのだと純に教えられる。
「なるほど、ホテルで頼んでみるよ」
「なあに言ってんだよ、うちに泊まればいいじゃん。ホテルなんてもったいないからキャンセルしろよ」
既に支払いも済ませているからとケンは遠慮したが、純は親がとにかく今夜はうちに泊まれと言っていると頑としてきかない。
「じゃあ、今夜は泊めてもらうよ。ただ、純、教えてほしいことが」
ここにいる人々が心から自分を受け入れてくれていると、ケンは理屈抜きに実感できた。
「何だよ? 残念ながらベッドじゃないし、うちは狭いから雑魚寝みたいなもんだけど、ま、そこんとこは文句言うなよ」
純はニヤっと笑う。
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