店主はカードで精算した後、再び、純の袖を引っ張って囁いた。
「おい、いったい何者だよ? この人。うちでこんなカード使ったヤツ、初めてだぞ! プラチナカードってやつだろ?!」
熨斗はお歳暮かい、と聞かれ、日本では節目の贈り物などに熨斗をつけてラッピングするのだと純に説明してもらったケンは、それを頼んだのだが、漢字で御歳暮と書かれたものを見て、わけもなくひどく嬉しくなった。
四本の一升瓶はスーツケースに入れても割れないよう梱包して届けると言われ、二人はビールやウイスキーなどが入った袋を両手に岡本時計店へと向かう。
「あのさ、詮索する気はないけど、大学教授とかってそんな儲かるもん?」
道すがら純がたずねてきた。
「え? 大学教授か、書いた本でも売れればどうかな。ごく普通じゃないのか?」
「いやだって、あんた、さっき、プラチナカードとか出してるし」
ケンは、ああ、と納得がいった。
「こんなカードを持てるのは、父のロウエルが資産家だったせいだよ。ロウエルは身寄りもほとんどなかったから、遺産を受け継いだだけだ。俺の成した財じゃない。自分ではそんなに贅沢はしないつもりだけど、贈り物とかは別だろう。特に父の家なんだから」
「そうなのか。まあ、そんな風に思ってもらえるのならいいけど」
純がどうやら散財しているのではないかと心配してくれたらしいと、ケンは笑みを浮かべた。
「ああ、それに、今は大学じゃなくて、宇宙局傘下のオフィスで働いている」
「へ??」
途端、純が振り返る。
「宇宙局?! すげ! 何、どんな仕事すんの? 火星とか金星とか調査すんの? 宇宙ステーションとか行くのか?」
「残念ながら、その補佐的な仕事……かな」
期待に満ちた純の目とまともにぶつかって、ケンは少し言葉を濁した。
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