「ケンは俺のばあちゃんによく似てるんだ。ばあちゃんはな、どっかのいいとこの出だったんだ。そうだ、兄貴はばあちゃんっ子だったからな、瑠美さんとの馴れ初めが、そもそも瑠美さんがばあちゃんに似てるってとこからだって言ってやがったな」
しみじみと文也が遠い目をして、一つため息をついた。
「確かにおふくろに似てるよ、ケン」
あまり口数も少ない純一までがうんうんと頷く。
「ってことは、俺もお品がいいってことじゃね? そっくりなんだからよ」
純が自分とケンを指さして言った。
「なーにが、言うにことかいて、お品ってのはこう滲み出てくるもんさな、てめぇのお品が聞いて呆れる」
「何だと?!」
今度は親子喧嘩が始まりそうな気配となったその時、ケンの上着のポケットで携帯が鳴った。
今頃誰だろう、と思いながら画面を見ると、Hansの文字が浮かんでいる。
「ちょっと失礼します」
ケンは居間から出て電話をタップした。
「そっちは今、31日の午後2時頃か? 何かあった?」
「いや、こっちは犬たちとのんびりお茶するくらいで退屈極まりないよ。で、ルーツは見つかった?」
「ああ。父親の家で、祖父母や叔父一家と一緒に、美味い寿司やすき焼きをいただいたところだ」
「寿司! 羨ましい限りだ。ミュンヘンにも美味い寿司屋があるが、やはり日本で食べた寿司は別格だった」
受話器の向こうのハンスは、本当に羨ましげでテンションが高い。
「日本酒を土産に持って帰るよ。もちろん、ハンスの分もあるから期待して」
「ほんとか? それは嬉しいな。本来の家族と十分楽しんでくるといい」
「ああ、そうするよ」
電話が切れると、何とも言えない寂寥感に襲われて、ケンは苦笑いした。
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