「ニューヨークの一等地にあれだけの敷地と屋敷を持ってる方がずっと贅沢だろう」
「あれは父の屋敷だから。それに一等地じゃないよ」
そういえばクラウスはどうしてるんだと聞くと、今はミュンヘンのハンスの自宅にいるという。
クラウスの話からハンスの家で飼っている犬の話になり、クラウスの他に、ワイマラナー三頭、ドーベルマン二頭、シェパードが三頭いるのだと言った。
「大型犬ばかりじゃないか。誰が世話してるんだ?」
「二人、頼んでいる。みんな訓練はされているが、俺に懐いているのはクラウスとワイマラナーのヤンくらいだな。本当は俺が欲しがって買ってもらったやつらの子孫とかばかりなんだが。猫もいる屋敷中に十頭くらい。ブリュンヒルデに懐いていた子は連れて行ってもらった」
「猫係もいるのか?」
ケンはまじめに尋ねた。
「まあね。トイレの世話をしてもらっているが、ご飯にはどこからともなく現れるし、俺はいいとこどりだな」
「まったくだ。俺はジョーだけで手一杯だ。それも遠出で連れていけない時はシッターを頼まなくちゃいけないし、寂しい思いをさせたくないから」
「ケンは優しいんだな」
「ジョーにはね」
「俺にも優しくして欲しいな」
「してるだろ」
ちょうどそこへディナーが運ばれ、部屋で食べるなら面倒な作法は抜きだ、というハンスに合わせて、夏以降にあった出来事をお互いに話しながら笑いあった。
ハンスといるととても楽しかった。
ハンスもそう感じているらしいと、ケンは思った。
だからだろうか、ハンスは明け方までケンを離そうとせず、ひどく疲れさせた。
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