ハンス、俺はアレクセイの代わりにはなれないよ。
そんなことを考えながらも、いつしかハンスからの連絡を待ってしまうようになっていた自分をケンは持て余した。
ミュンヘンに来ないかと誘われた時、本当はフィフティフィフティなんかじゃなく、すぐにでも飛んで行きたい衝動にかられたのだ。
だから、その反動で、日本に行く、と口にしてしまった。
でもこうして父の家族に会えて、日本に来たことは正解だった。
もう一度自分を見つめなおす、いい機会かもしれない。
「初詣いくぜ。どうしたのさ、やっぱり彼女に会いたくなった?」
ぼんやりコートを着て時計屋の店先に突っ立っていたケンを純が促した。
「いや、そんなんじゃないって…。よし、行こうか、ハツモウデ!」
純と享の兄弟に信道も加わって、四人は駅に向かって歩き出した。