少しばかりまたハンスのことに思いが飛んでいたケンは、気になる言葉にはっとする。
「ネットで見たことあるけど、モデルとかと一緒に派手なヤツでさ、でも、何かハンドル握らせるとすげぇってか、何年か前、アメリカで優勝したのにそれっきり、レースとか出てこねぇし、今、あいつ何やってんの? もうレースとかやんないのか?」
享はF1のファンで、レーサーのアロンソが好きらしいと純がケンに通訳する。
「なんだけど、二、三年前アメリカグランプリで優勝したリワーノフってレーサー、そん時の走りがすげかったって。あいつ今何してんのって。リワーノフなら俺も知ってる。どっちかってとセレブと派手な写真とかのが有名じゃん。モデルとかこないだ年末は、アマンダ・クーパーとかとイチャコラしてたし」
眉根を顰める純を見て、ケンはついくすりと笑ってしまう。
「何がおかしんだよ」
「純はアマンダが好きなんだ?」
「悪いかよっ! アマンダの出てる映画はみんな見てるんだよ。第一、あいつこそモデルみたいなくせ、あいつリワーノフって何者? 科学者とかっても書いてあったし」
純までがそんなことをケンに聞いてくる。
全く、世界中どこにいてもアレクセイの名前を聞く羽目になる気がする。
ケンは「いや、何なんだろうね」と苦笑するが、アレクセイはそれだけの存在なのだと改めて実感する。
そのあとは映画は何が好きだ、ハリウッドの俳優と会ったことがあるか、ニューヨークで今クールなことは何かというような話で、みんな酒も入っているので声高になりながら盛り上がった。
岡本家が毎年初詣に向かうのは、この辺りでは一番知られている柴又の帝釈天だという。
「寅さんで有名なんだ」
「トラサン?」
純は日本では国民的な人気映画の主人公なのだと、人情味溢れた人となりを丁寧に説明してくれる。
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