東京へ行こう -ハンスとケン- 42

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    Act 5

 名古屋へ向かう新幹線のホームへ、ケンと純を案内した千恵美は、朝から楽しそうだった。
 ただ、アップしていた髪は降ろし、柔らかい黒のセーターや黒のパンプスは昨日とは雰囲気が違って大人しめに見えた。
「お弁当、松竹梅弁当ふんぱつしちゃいましたあ。お茶と、それにお菓子も色々ありまーす!」
「ピクニックじゃねんだぞ。それにたった一時間半だろ? 弁当食って茶飲んだらもう降りなきゃだ」
 ふわあっと大あくびをした純は、朝から仏頂面である。
 昨日、千恵美と朝十時に東京駅で待ち合わせることにして別れた後、ケンは純に付き合ってもらってデパートに寄り、倉本家に持っていく土産を用意した。
「千恵美がいうように、酒好きなじいさんなら日本酒がいんじゃね?」
 デパートでは英語が話せるスタッフがいたので、ケンは色々説明を受けて吟醸酒を二本買った。
「あ、お年賀でお願いします」
 またそんな高い酒押し付けられやがってと、ブツブツ文句を言いながらも、純はスタッフに口添えしてくれた。
 岡本家に帰ったケンは、純と一緒に名古屋の倉本家を訪ねることをみんなに伝えると、文也は腕組みをして、一人頷いた。
「そうか。いくら何でも孫がわざわざアメリカから訪ねてきたとなりゃ、あの頑固ジジイも少しは考えを改めるだろうさな」


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