ケンといえば、純とはまた違った感慨で門を屋根まで見上げていたが、ついいつもの癖でカメラが設置されているのを見て取った。
造りは古いが、どうやらセキュリティは最新らしい。
木戸をくぐると、門から玄関へは飛び石のアプローチになっており、左右には手入れが施された和風庭園が広がっていた。
「きれいだね、日本の庭」
「超古典って感じ」
庭を眺めながらしきりと感心しているケンに、純が頷いた。
「しかもでけぇ」
玄関を開けると内側は現代の建築様式で造られた屋敷となっていたが、六畳ほどもある広い玄関には古風な衝立が置かれ、これもまた古めかしい大きな壺をメインに、大きな松に竹と梅、金銀の柳をあしらった正月らしい豪華なオブジェが飾られている。
「ただいま帰りました」
千恵美は大きな声で告げると靴を脱いであがり、傍らにあったスリッパ立てから三足取って、床の上に並べた。
「わかると思うけど、靴は脱いであがってね、ケン」
「Yes」
千恵美の声を聞きつけて廊下から現れたのは和服の年配の女性だった。
千恵美によく似て顔立ちが整った美人だ。
「お帰りなさい、千恵美。………お客様?」
ケンが靴を脱ぐ前に、女性はケンと純を交互に見つめた。
「ええ、お母さんの甥のケンとその従弟の純よ」
千恵美はいとも簡潔に二人を紹介すると、今度は英語で、「ケン、あなたのお母さんの妹、あたしの母、真美よ」とケンに言った。
「初めまして、ケンです」
画像と携帯に残っていたいくつかの動画でしか知らない母親だが、生きていたらこんな感じなんだろうかと、面差しがやはり似ている真美を感慨深げに見つめながら、ケンはたどたどしい日本語で言った。
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