「何、何? ケンも彼女のことで何か悩んでる?」
純は興味津々でケンを覗き込む。
「ひょっとして青い目のブロンド美人とか?」
「残念ながら」
ケンは苦笑する。
いや、でも青い目にブロンドは関係ありかもな。
やがてエプロンをした年配の女性がお茶を運んできて、二人の前に紅茶とスコーンを置いた。
女性と入れ替わりに千恵美が戻ってきた。
「見栄っ張りの兄嫁が秋にヨーロッパ旅行に行って以来、ロンドンにかぶれてるの」
なるほどティーカップはウェッジウッドだ。
「今日は兄も兄嫁も父も母もいるのよ。運が悪いことに。もちろん祖父もね」
「向こうもきっと新年早々何だって歓迎せざる客が二人もやってくるんだって思ってるかもな」
千恵美の言葉に純が皮肉った。
「いや、ケンはそうとは限らないから、約一名」
やがてドアが開いて、杖をついた老人を先頭に、眼鏡をかけた五十がらみの男と千恵美の母親、それから少し神経質そうな眼鏡の若い男としっかり化粧で顔を作った和服の若い女、続いてその後ろから先ほどのエプロンの女性がトレーを掲げて入ってきた。
ケンと純が座るソファのほぼ向かいにあるアームチェアに老人が腰を降ろし、二人を睨み付けるように見た。
二人の座るソファの左続きに置かれた二つの椅子に千恵美の母と年配の男が座り、右続きのソファには若い男と女が座った。
千恵美は一人ケンと純の後ろに立っている。
みんな固い表情をしていた。
「瑠美の息子だというのはお前か」
ティーカップがテーブルに置かれ、エプロンの女性が部屋を辞すると、踏ん反り返った老人は徐にケンに向かって尋ねた。
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